10月20日、創作発表会を無事に終了いたしました。
ご来場いただいた皆さま、そして活動を支えてくださった皆さまに心よりお礼申し上げます。
今回は、発表会の構成・演出を担当された舘そらみさん(だてっくす)と、ワークショップファシリテーターを担当された村井まどかさん(むらいちゃん)に、公演を振り返ってお話を伺います。
[左:村井まどか(むらいちゃん) 右:舘そらみ(だてっくす)]
<表記>
だて:舘そらみ
むら:村井まどか
かと:加藤奈紬(聞き手)
かと:発表会お疲れさまでした。早速ですが、創作の初日(9/28)に今年の参加メンバーとあった時の印象はどうでしたか?
だて:私がすごい驚いたのは、前回から一年経っているにもかかわらず、去年いたメンバーがゼロからのスタートじゃなくて、去年の延長線上のさらにその先みたいなとこにいたのがすっごく印象的だった。だから、恥ずかしいとか、もうそういうのが全然ない状態で創作楽しいって感じ。人としてももちろんだけど、劇場に来ることとか、演じることとか、知らない人と一緒に何かを作ることとか、コミュニケーションをとるっていうことに対してみんなレベルアップしていたんだよね。
[ワークショップ初日のアイスブレイク]
かと:去年はみんなまだ恥ずかしいみたいなことがあったんですか?
だて:あった!去年のはじめですごく印象深いのは「これやっていいの?」とか、「こんなことまでやっていいの?」とかがあった。アイディアに対して正解を求めるみたいな感じだった。でも、今年は最初から「ここは何やってもいい場所だ。創作は何を演じてもいいんだ」っていう、他の人のアイディアも全部面白がるみたいな土台があったのが印象的ですごいなって思った。新しく参加したメンバーも絶対はじめは緊張してたり、居心地がそんなに良くなかったりするはずなのに、「私はやるぞ」みたいな決意を持ってくれていたのが本当に有難いなって思った。
かと:ワークショップの過程はどうでしたか?
むら:去年から参加してたメンバーが初めて参加するメンバーになんでもない時に声をかけてる姿がすごく多く見られた。この場所で一緒に公演する仲間たちなんだなっていう気の持ち方で、早く仲良くならないと、みたいな。去年参加したメンバーが積極的に新しい人たちを受け入れるっていう体制づくりをしていたのはすごいと思いましたね。名前をとにかくすごい呼んでくれてた。誰がいないとか、すぐに言ってくれたり、気にかけてくれたりとか。
かと:ファシリテーターの真似をするように、みんなが誰かを一人ずつ連れて歩いてるみたいな、ちゃんとしたチームワークだなって見ていました。
だて:別に分担したわけでも全くないのにね。私ちょっと演出的な目線になっちゃうんだけど、今回ってチームでのシーンもあれば、全員でやるシーンもあるじゃない。その、全員でやるシーンの時に全員に向けて言った時に、全員が当事者意識を持ってくれるっていうのがすごい印象深かった。それすごい難しいことだと思うんだ。去年とかは全員のシーンとかでも一人ずつ名前を呼んで「これやってね」「今、これやるんだよ」みたいな確認が必要だったのが、今年は「みんなでこれやります」って言ったら、個々が理解していて、私ももちろんそれの一員です、みたいな。当たり前のように当事者意識を持って自ら動くし、どうせなら面白いことやっちゃろうみたいな。私、声かけを今年はすごいしてない。
むら:(笑)。すごいそう思う。去年は一人一人に声かけしてた。でも、今年は例えば一列に並ぶ時でも「ここだよ」って言ったらみんな並べるみたいなことが増えてた。
だて:全員に「ポーズとって」って言って、ポーズしてくれるのもすごい素敵だし、同時にそのポーズをお互いが見て「あ、それやるのね。じゃあ違うのやるわ」みたいな姿がたくさん見えた。
むら:うんうん。
[冒頭シーンの演出方針を参加者に伝えるだてっくす]
かと:本番はお客さんが思わぬところで拍手してくれたり、結構参加してくれてるなと思ってみていました。客席の照明も完全には暗くならなくて、リラックス・パフォーマンスみたいな状態に近かったですね。お二人は今回本番を最前列で観られたと思うんですけど、いかがでしたか?
だて:今日終わった時に、お客さんと出演していた俳優が同じ顔して終演を迎えているってすごく感じた。お客さんたちがまるで出演したかのように、一員になったかのように、晴れ晴れとした顔してくれてるの。ロビーでお見送りしても誰が出演してたかわからないぐらい。その感覚は本番を観てる時に背中(客席)からもすごく感じた。みんなで一緒に作り上げていくっていう感覚が充満してるよね。これって、舞台上のみんなが練習してたものをただ出すとかではなくて、生き生きと空気を感じて居続けてくれてるから、お客さんのことも仲間にしてくれてるような気がする。
だから、私も最前列に座りながら別に客席の最前にいるっていう感覚よりは、なんだか360度の中の真ん中ぐらいにいるような気持ちになった。この一丸となる感じは忘れられない経験だなってすごく思います。両者が共鳴し合って同じところに向かっている、こんな夢みたいなことないなって感じる。
むら:ひょっこりシアターってお客さんとの一体感みたいなのがすごくあって、劇場に来る前から、お客さんが参加してくれてるみたいな、作品を見た後も一緒に演じてくれてたみたいな。最後まで乗り切ったね!みたいな、後説でお客さんの前に出るときに劇場全体が晴れ晴れとした空気に包まれていたのを感じた。
今日、最初にかとちゃんが舞台の端に私たちの席を用意してくれてたじゃん?でも、なんかやっぱり最前列がいいなって思ったの。それで、そらみの話を聞いていて、真後ろにはあたたかく見守っているお客さん、目の前にはあのメンバーたちっていう。背中に感じるお客さんたちがすごい心地いいから、改めて今日、「私、ここにいたかったんだな」っていうのを思った。
[リハーサルの様子]
だて:私さ、最前列で観てたじゃない。隣に小学生の女の子が座ってて、初めての経験なんだけど、芝居中にその女の子と顔見合わせて笑ったのね。初めて、隣のお客さんと顔を見合わせて笑うなんて。でも、そんな瞬間があった。私が「フフフ」ってなって、その子も「フフフ」ってなって、なんかお互いに見つめ合って「ねぇ〜」みたいな。そういう空気感が流れてるんだよね。
かと:劇場で味わったことないですよね。
だて:うん。なんか仲間っていうか。
かと:最後にこのひょっこりシアターの活動で大切にしていることや、これから目指していきたいことを、まとめる形でお願いしてもいいですか?
だて:ちょっと思いがひとしおでございます。
むら:(笑)
だて:どのような障害があろうが、人間誰しも得意不得意がある。人間誰しも思いっきり何かにチャレンジして、それを成し遂げるということ。しかもそれを人に観てもらうということ。もしくは誰かが何かを頑張ってチャレンジして成し遂げている瞬間の笑顔を見るということって、本当に喜びでしかないと思っているんですよ。ひょっこりシアターはいつもそれにチャレンジしているような気持ちがある。これは本当に障害とかは関係なく、各々どの人間も抱えているちょっとチャレンジしたいなとか、やってみたいな、もう一押し背中押されたいな、みたいなものを一緒に乗り越える場所が私は日本中に、世界中に広まってほしいなって思ってる。
だからこのひょっこりシアターの活動が続いていくことはもちろんだし、お客さんもきっとこれ見たら元気でて、頑張ろうって気持ちになるような気がする。だからひょっこりシアターの活動が派生して、どんどんそんな瞬間が繋がっていけばいいなって思いながら、ただただ目の前の参加者に向き合ってる。
むら:ひょっこりシアターをまずやろうと思った時に、とにかく誰でもどんな人でも一緒に劇場で演劇で遊ぶっていうことができる場所を目指してた。演劇作るからにはやっぱり観てもらう楽しみがあるから。その時、まず初めに構成・演出をそらみにお願いしたのはそらみが愛の人間だから。愛を叫んでどうにかなると思っている人間だから。それでどうにかなっちゃうのがそらみで、そらみの演出だったり、作品だったり。周りにいる人を変えるのも全部愛が発信の人。一番最初にひょっこりシアターで作品を作るって時にお願いしたのは、やっぱりその愛で背中を押して、愛一本で押し進める。
だて:テクがないみたいに言うな(笑)
むら:そのなかで作り上げられるものがすごい観たかった。まず一歩目はそれだろうなって思ったんだよね。それでどこまででもいけるんだなって感じがしたし、それに参加者の人たちがちゃんと真摯に答えて、作品を作って、それがちゃんとお客さんに伝わる。
私は最初、誰でもいいからとにかく劇場にいられる場所を作りたかったんだけど、どんどん欲が出てきた。
私たち江原河畔劇場がそういった場所を担保する。居場所は作って、そこでいろんな人たちが来て、毎回違った遊びがあったり、色んな作品がひょっこりシリーズとして作れたらいいなって思ってる。
だて:むらいは本当に頑張ってこの機会を作っていると思うんだけど、そして持続させようと公言してるってやべえことだなって思う。すごい覚悟でこの人から始まってると思う。
むらいも私も、そしてアシスタントのみんなも年々信じることからしか始まらないというのを骨身に沁みてるよね。誰でも初めましての人はどう接していいかわかんないし、気が合わなそうな人だったら、距離取りたくなる人がいて当たり前なんだけど、人間として悪い人だっているかもしれないとか。でも、もう出発点として信じるしかないじゃん、人のことを、人間のことを、相手のことをみたいな。どんどんそうさせてくれてるのは参加者やサポートの人たちとの時間。
むら:参加者との時間はそうさせてくれてるよね。
だて:信じられる場所としてあり続けたいね。今、思った。
取材日:10月20日(日)
於:江原河畔劇場 楽屋
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【ひょっこりシアター2024演劇創作 発表会】
実施日:2024年10月20日(日)