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対談企画|もっと知りたい!ひょっこりシアター vol.2

江原河畔劇場で活動する「ひょっこりシアター」が、今年、初めて豊岡演劇祭に参加します。

そこで、豊岡演劇祭2026での上演に向けて、「ひょっこりシアターってどんな活動?」「どんなふうに作品をつくっているの?」を、あらためてご紹介する企画「もっと知りたい!ひょっこりシアター」。

vol.2では、アシスタント・サポートメンバーの坂戸里多さん(写真右)、赤間菜穂さん(写真中央)、田口真記子さん(写真左)の3人に、ひょっこりシアターとの出会いや、創作のおもしろさ、そして初めて迎える豊岡演劇祭への思いをお聞きしました。

――まず、ひょっこりシアターでは普段どのような役割をしていますか。

坂戸 私は2年ぐらい前から、アシスタントとしてワークショップの中に入り、メンバーと一緒に創作しています。

最初は発表会の当日運営をやったのが始まりでした。そこでひょっこりシアターと出会って、その後の冬ぐらいから少しずつ関わるようになりました。

――発表会の当日運営をやることになったきっかけは何だったんですか?

坂戸 私は元々アクセシビリティに興味を持っていました。そのことを豊岡演劇祭のプロデューサーの加藤さんにお話ししたことがあり、覚えてくださっていて。当時、加藤さんがひょっこりシアターの制作を担当されていたこともあり、声をかけていただきました。

制作をやったことはなかったんですけど、「空いてます」と伝えたら、とりあえず当日来てって(笑)。受付をお手伝いするところから始まりました。そこで江原河畔劇場のみなさんとも出会って、「こういうことに興味があります」という話をする機会があって、そこからアシスタントに入らせてもらうことになるまでは、トントン拍子でした。

――江原河畔劇場で働くようになる前に、ひょっこりシアターとの出会いがあったんですね。

坂戸 そうなんです。全ての始まりはひょっこりシアターでした。ちょうど劇場のアルバイトも探されていた時期で、「もしよかったらアルバイトしてみない?」と声をかけていただいて。

――運命ですね。

坂戸 運命を変えてくれました(笑)。

――では、赤間さんは?

赤間 私はワークショップアシスタントとして参加しています。去年の体験ワークショップの1回目から関わっていて、今年で2年目です。

――参加しようと思ったきっかけは何だったんですか?

赤間 ちょうどその頃、いろんなワークショップにとにかく行ってみたい、という気持ちが強かったんです。

児童劇団や、豊岡市の非認知能力向上事業のワークショップなど、いろいろなところに「とりあえず突っ込んでみよう」と思っていた時期に、ひょっこりシアターの募集があって。「あ、じゃあ行ってみよう」と参加したのがきっかけです。

――では、田口さんはどんなふうに関わっていますか?

田口 私はワークショップの中に入るというより、活動しているみなさんを撮影したり、それを見守っている保護者のみなさんとおしゃべりしたりする係です。自分では「近所のおばちゃん」だと思っています(笑)。

第一回の発表会を観て、「なんかすごくいいな」と思ったのがきっかけでした。

――どんなところが印象に残ったんですか?

田口 観ているうちに、劇場全体がふわーっとした空気に包まれ、心がひとつになるような、なんとも言えないあたたかい気持ちになったんです。
「関わってみたい、でも、演劇の経験もないし…」と思いつつ、「とりあえず行ってみよう!」と、まずはワークショップに参加しました。

――実際に参加してみてどうでしたか?

田口 参加してみたら、私はワークショップの中に入って一緒に創作するというより、別の形で関わる方が自分には合っているのかなと思いました。

それでサポーターとして入りました。最初は「何をしたらいいんだろう」と思っていましたね。でも、見守ったり、写真を撮ったり、保護者の方と話したりする中で、そういう関わり方もあるんだなと感じるようになりました。

――活動の中で、改めて意識するようになったことや、大切だと思ったことはありますか?

坂戸 私は以前から、劇場と障害のある方たちとの接点について考える機会が何度かあったんです。

その時から思っていたのが、「劇場に来てほしい」という思いをこちらから押し付けるのは違うということ。ただ入り口を広くしておくことが大切なんじゃないかと思っていました。

ひょっこりシアターに参加する時にも、その前提を忘れないようにしていて。参加しているみんなも、それぞれが「やりたい」と思ってここに来ている。私にとっての当たり前が、みんなにとっての当たり前ではないということも、忘れないようにしています。

最初は、無意識のうちに相手の領域へ土足で踏み入れてしまったらどうしよう、という怖さもありました。でも、少しずつ関係をつくっていくような気持ちで関わってきました。

田口 私も、「自分の常識は常識じゃない」と思うことは大切にしていますね。

一つのものを作る時でも、自分では「こうやるものだ」と思っていたのに、別のルートからたどり着いたり、違う解釈が出てきたりする。「正解はこれだけじゃないんだ」と気づくことが多いです。

赤間 それに共通しているのが、「知りたいと思うことをやめないこと」なのかなって。その人自身に対して、「あなたのことを知りたい」という気持ちを持ち続けること。自分の中にある「当たり前」と、その人の「当たり前」が違うことも含めて、知ろうとすることを大切にしています。

(――赤間さんから田口さん・坂戸さんへ)
その気持ちを、実際の関わりの中ではどう表していますか? 意識していることや、具体的にしていることはありますか?

坂戸 「分かった気にならない」ことですね。

事前に「こういうところがあります」「こういうことが苦手です」と聞くこともあります。もちろん大切な情報なんですけど、それがその人のすべてではないので、「この人はこういう人だから」と決めつけないようにしています。

それから、必要以上に構えないこと。こちらが壁を作ってしまったら、相手にも距離を感じさせてしまうと思うので、「私はウェルカムだよ」ということが伝わるようにしたいなと思っています。

挨拶だったり、休憩時間の過ごし方だったり、本当に些細なことですけどね。

――赤間さんはどうですか?

赤間 私は、ずっとニコニコしていよう、と思っています(笑)。

あと、意識的に「大人と子どもの間」みたいなところにいようとしていて。劇場の人たちに囲まれると、誰でも緊張することはあると思うんです。その間にいられる人が一人いることで、少し入りやすくなったらいいなって。

参加しているメンバーには私と同世代の人も多いので、年齢が近いからこその関わり方もあるのかなと思っています。

――年上の人がいる安心感と、同世代の人がいる安心感は、また違いますよね。

田口 私はどちらかというと、参加しているメンバーよりも、保護者のみなさんと過ごす時間の方が長いんです。「家では見せない顔が見られる」とか、「今日はこんな表情をしていた」とか、そういう話を聞くのが楽しくて。

最初の頃は、保護者のみなさんからすると、私は「何をしている人なんだろう」という感じだったと思うんですよ。劇場の人間でもないし、演劇の人間でもないし、福祉の仕事をしているわけでもない。

でも、何度も活動に顔を出して、おしゃべりするうちに、今では日々のことや家でのことなど、いろいろな話をしてくださるようになりました。

――時間を重ねたからこそできた関係ですね。

田口 そうだと思います。だから、最初にも言ったんですけど、「近所のおばちゃん」でいることが、私にできることなのかなって。

なんでもない世間話をしたり、ただ一緒に時間を過ごしたりする。そうしているうちに、少しずつ話せることが増えてきたのかなと思います。

――以前、立ち上げメンバーにお話を聞いた時、保護者のみなさんも衣装づくりに関わったという話がありました。

田口 あの時間は、すごく良かったです。

みんなで衣装を縫いながら、自分の子どもの話が始まるんですよ。手を動かしているうちに自然と話に花が咲いて、時々、衣装を作ることよりもおしゃべりの方が楽しくなっていて(笑)。

私は、「いい時間が始まったな」と思って、その時はあえて近づかずに別のことをしていました。

――これまでの活動の中で、特に印象に残っている出来事や場面はありますか?

坂戸 私は、去年の発表会に向けた稽古が印象に残っています。

本番の前々日ぐらいから一気に稽古が濃くなって、直前まで「やっぱりここはこうしよう」「こっちはこうしよう」と、その場で構成が、どんどん変わっていったんです。

私も少し出演するところがあったので、一緒に稽古しながら「あれ、今何をやるんだっけ?」となるぐらい(笑)。でも、本番が近づくにつれて、みんなの集中力もだんだん高まっていったんですよね。

誰かが「集中しよう」と言ったわけでもないのに、自然と空気が変わっていった。それを感じた時に、「演劇してるな」ってすごく思いました。

お客さんが入り始めてからも、楽屋で「最初は誰から始まって……」と順番を確認していて。直前まで変更が続く中でも、みんなが自分の出番や役割を確認しながら本番に向かっている姿が、すごく印象に残っています。

私自身も仕事をしていて、自分に任されたことがあると、それに応えたいと思うことがあります。そういう気持ちは、何かを一緒に作る時に大切なんだろうなと、その時改めて感じました。

田口 私はその稽古を見ていないので、本番を観て初めて「こうなったんだ」と分かることがたくさんありました。

衣装づくりをしていても、それが舞台でどう使われるのかまでは分からないんです。「ゼッケンをもっと大きくしてほしい」と言われて作り直したものも、本番を観て初めて「ああ、大きくないと駄目だったんだ」と分かったり(笑)。

何に使うのか分からないまま作っていたものが、本番でつながる。それも面白かったですね。

――作っている時には見えていなかったものが、本番でつながるんですね。

田口 そうそう。

赤間 私は、前回の体験ワークショップで客席にいた時のことが印象に残っています。その時、作品の中に「1たす1は5」というセリフと、その後に「1たす1は田んぼの田」というセリフがあったんです。

それを聞いた隣の参加者が、終わった後に「まちがいじゃなくない」と言い始めて。

「どういうこと?」と聞いたら、「田んぼの『田』って五画じゃん」って。

坂戸 すごい、確かに。

赤間 そうなんです。「だから『1たす1は5』は間違ってないんだ」って。

作った側は、そこまで考えていたわけじゃないんですよ。「5」もその場でぱっと出てきた数字だったし、「田んぼの田」も、その流れの中で出てきた言葉だった。

でも、それが演劇になった途端に別の意味を持ちはじめて、さらに客席で違う方向に広がっていった。それがすごく面白かったんです。

坂戸 そこまで考えて観てくれてるんだ。終わった後まで余韻に浸って、作った側が意図していなかったところから、また何かが生まれているというか。

赤間 客席まで含めて作品が続いているような感じがして、すごく面白かったです。

田口 私は、活動の場だけじゃなくて、街の中でもつながりができてきたことが嬉しいですね。ワークショップ以外の時に会っても、手を振ったり声をかけたりすることが増えて。

スーパーで会った時に「何探しとるん?」って声をかけてもらって、「ここにあるで」って連れて行ってもらったり(笑)。

ここで決まった日に会うだけじゃなくて、劇場の外でもつながりができてきたことが、すごく印象に残っています。

――アシスタントやサポーターとして関わっているからこそ感じる、ひょっこりシアターの面白さはありますか?

田口 あります。創作ワークショップでは、本当に予測できないことが次々に起こるじゃないですか。
私は少し離れたところから全体を見ているので、いろんな場所で同時に起きていることが見えるんです。「こんなにいろいろ出てきて、どうやって一つにしていくんだろう」と思うんですけど、ファシリテーターのみなさんが、一人ひとりから出てくるものを見ながら、少しずつ作品につなげていく。その過程をリアルタイムで見られるのが面白いです。

――ワークショップの中に入っているお二人は、どうですか?

赤間 ひょっこりシアターは、いつも面白いです。面白いことしかない(笑)。

――先日、参加者の安達さんにも創作の話を聞いたんですが、最初にみんなが「やりたい役」を出すと、どうやって一つの話になるんだろうと思うような組み合わせもあるそうですね。

坂戸 そうなんです。全然つながりの見えない登場人物たちが、公園に集まっていたり、学校にいたり、この人は泥棒で、みたいなことが出てきても、それを当たり前のように受け入れて、そこから話をつくっていく。

誰かが「こういう話にしよう」と強く引っ張っていくというより、みんなの話を聞きながら、少しずつまとめていく感じなんですよね。

田口 一人ひとりが出したものを、「これは違う」と切っていくんじゃなくて、「ここが面白かった」と拾っていくんですよね。

坂戸 最後にみんなで感想を話す時も、「あの場面が面白かった」と、それぞれがちゃんと見ている。やる側が「ここを見てほしい」と思っていたところを、別の人が拾ってくれることもあるし。

なんか、気づいたら演劇してる、みたいな。

赤間 名前をつけるとしたら「演劇」だった、みたいな。

田口 それぞれの解釈は違っても、「今、何をするか」はみんなで共有しているから、不思議なんですけど、ちゃんと一つのものになっていくんです。

――ひょっこりシアターとして豊岡演劇祭に参加するのは今回が初めてですが、みなさんが楽しみにしていることや、注目していることはありますか?

坂戸 私は、お客さんの反応や、会場にどんな空気が生まれるのかがすごく楽しみです。
これまでの発表会は、ひょっこりシアターのことを知っている方が観に来てくださることが多かったと思うんです。でも今回は、豊岡演劇祭で初めて観る方もたくさんいる。

田口 私が初めて発表会を観た時に感じた、あの「ふわーっ」とした感じも味わってもらえたらいいなと思っています。

坂戸 演劇祭の期間は、劇場そのものの雰囲気もいつもとは変わると思うので、その環境をメンバーのみんながどう感じるのかも気になっています。

――赤間さんはどうですか。

赤間 去年の発表会では、舞台と客席の間で、なんていうんだろう、ラブコールみたいなものが行き来している感じがあったんです。

舞台から、お客さんに「見て、これ、こうだよ」って、ビームみたいなものが飛んでいる感じがして。今回はまた違うお客さんが集まると思うので、そのやりとりがどうなるのか、すごく楽しみです。

田口 ハラハラドキドキしています。

坂戸 どんな作品になるのかも、まだ分からないですしね(笑)。

田口 2公演とも、きっと違うよね。

坂戸 同じ筋でも、だいぶ違うと思います。これまでは発表会も一度きりだったので、一日目と二日目でどう変わるのかも気になります。

――今回も、舘そらみさんが構成・演出を担当されます。舘さんが入ってから、作品はどんなふうに形になっていくのでしょうか?

坂戸 舘さんがメンバーと直接会うのは、本番の少し前なんです。それまではスタッフから話を聞いたり、映像を見たりしながら、「今年はどんな雰囲気なんだろう」と考えてくださっていて。

毎年、同じメンバーもいれば違うメンバーもいるので、その年のひょっこりシアターがあるんですよね。

――今回は、まだ集中稽古も始まっていないんですよね。

一同 明日*からです。

赤間 去年も、いろいろ考えたものを持って来てくださっていたと思うんですけど、実際にみんなを見て、また考え直していましたよね。

坂戸 そう。最初に考えていたものがあっても、実際にみんなと会ってみて、「ちょっと違うぞ」となったら、そこから変えていくんです。

――今年どんな作品になるのか、まだ誰にも分からないんですね。

坂戸 分からないですね。

赤間 楽しみです。

――その答えが見えてくるのは、これから。いよいよ明日*から、豊岡演劇祭に向けた集中稽古が始まります。

*このインタビューは、稽古開始日の前日に行いました。

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豊岡演劇祭2026 公式プログラム
『ひょっこりシアター』
構成・演出:舘そらみ
2026年9月26日(土)〜9月27日(日)
江原河畔劇場
https://ebara-riverside.com/play/play_11982/