
江原河畔劇場で活動する「ひょっこりシアター」が、今年、初めて豊岡演劇祭に参加しました。
豊岡演劇祭2026での上演に向けて、「ひょっこりシアターってどんな活動?」「どんなふうに作品をつくっているの?」を、あらためてご紹介してきた企画「もっと知りたい!ひょっこりシアター」。
公演を終えたvol.5では、9月27日の終演後に行われたアフタートークを採録してお届けします。
登壇したのは、演出の舘そらみさん、ファシリテーターの村井まどかさん、これまで活動に関わってきたサポーターの藤本佳苗さん、そして豊岡演劇祭プロデューサーの加藤奈紬さん、河村竜也さん。
4年間の活動や作品づくり、公演を重ねる中での変化、今回初めて豊岡演劇祭で上演して感じたこと、そしてこれからについて語られた、終演直後の言葉をお届けします。

写真左から 村井まどかさん、舘そらみさん、藤本佳苗さん、加藤奈紬さん、河村竜也さん
「本当に確信しました」―豊岡演劇祭で見えた、ひょっこりシアターの“底力”
河村 改めまして、ご来場いただき、ありがとうございます。司会進行を務めさせていただきます。
本日は豊岡演劇祭2026最終日です。私も興奮冷めやらぬまま、少しうるうるしながら、今日、皆さんとお話しできることを楽しみにしていました。
後ほど、会場の皆さんからのご質問もお受けしたいと思いますので、ぜひご意見もお聞かせください。まずは改めて、お疲れさまでした。
一同 ありがとうございました。

河村 私は、今年の豊岡演劇祭で「やってみませんか」とお声がけした最初の張本人です。
2023年の第1回の時に、記録撮影でお手伝いさせていただいたんですが、その時も本当に面白くて。いつか豊岡演劇祭で、と思っていました。
当時はまだそこまで確信を持てていなかったんですけれど、豊岡演劇祭に参加していただきたい方が増えてきた中で、今年、この作品を公式プログラムとして上演できるんじゃないか、とふと思った時があって。
豊岡演劇祭のお客さんにご紹介したいという気持ちも強くありましたし、いろんなプログラムがある中で、「ひょっこりシアター」が一つ際立って見えるタイミングなんじゃないかと思いました。
そして実際に改めて観て、本当に確信しました。素晴らしい作品をありがとうございました。
加藤 私は2024年の第2回公演に制作として関わらせてもらい、外からの立場ではありましたが、ワークショップから上演に至るまでの経過を見させていただきました。
昨日、今日と2回とも観て、当時からのメンバーに加えて新しいメンバーも増えていて、とにかくすごく感動しました。それと同時に、劇場とか演劇にある「当たり前の感動」という原点に出会った感じがあって。
劇場というブラックボックスの中では、舞台上で「10分経った」と言ったら、そこに10分という時間の流れを私たちが想像できる。アイデアの自由さやコミュニケーションの積み重ねによって、一つ一つのショートショートがつながり、人間性や作品の深さみたいなものを1時間かけて体感できる。本当に素晴らしい作品だと思いました。
そして、こうした作品が江原河畔劇場で毎年一つずつ作られ、人が継続して劇場に通っていること自体が、豊岡にさまざまな劇場がある中でも、江原河畔劇場の大きな特徴であり、魅力だと思っています。
村井・舘 ありがとうございます。
河村 もう「面白い」が大渋滞していて、それでもずっと飽きることなく、本当に面白かったです。今回は、ゲネプロから本番まで、これまでで初めて複数回上演されたとのことですが、すべて終えてみて、いかがですか?

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
藤本 出演者の皆さん以上に興奮しちゃっていて(笑)。
私は、出石特別支援学校に勤めていた時に、今、最前列に座っている役者さんたちと一緒に、卒業公演やワークショップをしていました。加わっているうちに、私もすっかり虜になって。「演劇って、なんでこんなに楽しいんだろう」と。
学校で生活している中に加えて、何か才能のようなものや、「なりたい自分になる」ということ。今日の劇の中にも「なりたいもの」がたくさん出てきたと思うんですけど、「なりたいものになるんだ」という率直な姿にすごく感動しました。
ひょっこりシアターが始まってからは、ずっとサポーターとしてお手伝いしています。
私自身もこの近隣に住んでいるので、地域で俳優さんたちと買い物中に出会うこともあります。そんな時も「こんにちは」だけで終わらず、「あの時、すごかったよね」とか、ひょっこりシアターの話が自然に出てくるんです。それが本当に幸せなことだなと思います。
何よりも嬉しいのは、出石特別支援学校を卒業して、仕事をしたり、家で過ごしたりする中で、江原河畔劇場が一つの居場所としてあること。
いつでも「いらっしゃい」「こんにちは」と迎えてもらえて、一緒に笑ったり、話したりできる。すごくいい場所になっていると思います。
最前列にいる参加者の中には、小学部1年生の頃から知っている人もいます。出石特別支援学校で勤めていた時の子どもたちとの思い出は、私の中で一生消えない宝物です。
河村 ありがとうございます。舘さん、村井さんからも、改めて一言いただけますか。

村井 2ステージやるかどうかは、すごく悩みました。
河村 最初、相談しましたね。
舘 一瞬、3ステの話も出たよね?
村井 俳優として、1日に2回公演するのは大変です。今回はリハーサル、本番、そして翌日にも本番というスケジュールになるので、体力的にも未知数でした。みんなやったことがないから、どうかなというのは正直あって。
でも、決めればきっとみんなやってくれるだろうと思ったし、何より多くの人に観てもらいたかったので、2ステージやることに決めました。
昨日リハーサルをやって、本番、そして今日が3ステージ目。昨日と今日では全然違うんですけど、どちらもすごく素晴らしい出来で。「どこまで行けるんだろう」と、今日感じました。
舘 私は今4年目で、毎年「ひょっこりシアターってすごいな」と思っているんですけれど、今回、演劇祭に参加して、「ここまですごいんだ」と思っちゃったのが正直なところです。
毎年の発表会にもいろんな方が観に来てくださっていますが、ご家族やお友達、知り合いの方も多い。だからこんなに温かい客席なのか?どうなんだ?と思ってたんですが、でも昨日、今日と、初めてひょっこりシアターを観る、出演者と個人的なつながりもない、という方も客席にたくさんいらっしゃったと思います。
それでも、こんなにも熱量の高い拍手をいただけるんだ、と。ひょっこりシアターの底力を知れたような感覚があります。

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
台本から始めない。みんなの「やりたい」から作品が生まれるまで
河村 実は最近、海外からのゲストの方に「公式プログラムを選定する基準は何ですか?」と聞かれることがよくあるんです。
豊岡演劇祭には本当にいろんなプログラムがあって、プロの方もいれば、一般の方もいる。その中で、一つ一つを選ぶ理由を改めて自分の言葉にすると、自分たちの「発表したい」「やりたい」という思いが、ちゃんと人に伝染するか、伝わっていくか、ということだと思ったんですよね。
プロか一般かということではなく、「やりたいこと」「なりたいもの」、そういう挑戦が、観客やそこに参加している人に、自分たちを飛び越えて伝わるか。今日、改めてそのことを確信しました。
それぞれの「やりたいこと」から生まれたシーンが、どうやって一つの作品としてまとまっていくのか。すごく奇跡的にも見えるんですけど、どのように作っているんですか?
村井 基本的には、単発のワークショップと創作のワークショップがあって。
単発のワークショップでは、好きな役、やりたい役をみんなで持ち寄って、一つの作品をその場で作り、発表します。そこでできた作品を動画でそらみさんに送って、「今年のメンバーはこんな感じの作品を作ってる」と共有しています。
創作のワークショップでは、1回目を私がやって、それをそらみさんが見て。
舘 「この作品、本番に持ってくわ」と決めて。そこからは、出演するみんなも、アシスタントとしてついてくれているみんなも、一緒にアイデアを出しながらブラッシュアップしていきます。
最終的に、この作品群をどうつないだら面白いかを考えて、つないでいくという感じですね。
河村 参加者の皆さんそれぞれの「やりたいこと」を起点に、一緒に作っていくんですね。
舘 まさにそうです。
例えば、野鳥カメラマンの彼女が「私の体の柔らかさをお見せします」と言って、「いや、本当にあれ硬いんですけど」っていうシーンがあったと思うんですけど。あれは休み時間に急に始まったんです。
「えー、硬くない?」って。
村井 「硬い人選手権」みたいな感じになって(笑)。
舘 それで、「じゃあ、それシーンに入れていこうよ」って。そんな感じで作っています。

河村 逆に、いろんなアイデアを組み合わせていく中で、苦労したことはありますか?
村井 去年、2025年にやった創作は、そらみさんがすごく意気込んで来ちゃったんですよね。
舘 「今年もやるぞー」って(笑)。
村井 「こういうことやりたいぜ」とか言って、「習字したい」とか言い出したんですよね。
舘 「みんなで習字して、それを天に掲げるようなのをやりたいんだ」って。
村井 「いいよ」って言ってたんだけど、何日か経って、「違うわ」って作り直したりして。
舘 そこから教訓を得たんです。普段、脚本家として仕事をしていると、最初に脚本を書いて、それを設計図としてみんなで作っていく。ある程度ゴールを定めることが、脚本家や演出家の仕事の大きな部分だと思っているんですけど。
ひょっこりシアターでそれを最初にやると、その時のメンバーのブームや、その年のメンバー構成と、何かしら温度感がずれてきてしまう。
最初に私が「習字をやろう」と思っても、「今年のメンバー、習字な感じじゃなかった」ってなるんですよ。
だから、まずやってみる。30分、1時間やってみて、みんなが全然楽しそうじゃなかったらやめる。ゴールを定めずにやる、というのはあります。
河村 まず、みんなが面白いかどうかなんですね。
舘 そうですね。言葉で共有するというより、みんなが笑い転げていたらやる。
村井 ウォーミングアップも全部そんな感じです。
何かを「やりたい」と言ったら、「じゃあ一旦みんなでやってみよう」ってやってみる。面白ければ毎回やるけど、ダメだったらみんなの表情で分かるから、もうやらない、みたいな。
河村 その創作のプロセス自体が面白いから、皆さんも本番を楽しんでいるし、それが観ている側にも伝わる。そこにいろんな秘訣が詰まっているんだろうなと思います。


“野鳥カメラマンのシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
安心していられる場は、どうつくられる?
河村 今もサポーターをされているんですか?
藤本 今はサポーターです。職場が離れてしまったのと、みんなが卒業したので、地域で支えるサポーターとして。
舘 ずっと見守ってくださってますもんね。
藤本 本当、見守りなんですよ。「何かあった時に働くぞ」みたいな、影武者みたいな感じです。
ワークショップでは、まず円になって、無言でジェスチャーをして「何をやってるか当てよう」とか、ボールのようなものを隣の人に渡して、みんなで回していくとか、いろんなゲームから始まるんです。
その中で、ボールをポッと投げてみたり、逆さまに回してみたり。そうやってみんなが作り出していく最初のワークがすっごく面白くて、毎回お腹を抱えて笑っています。
ウォーミングアップが終わると、いくつかのチームに分かれて、「何になりたい?」「どんな役をやりたい?」というところから、ちょっとした劇を作って、みんなの前で発表します。
そこで「ここ、すごかったよね」とか、「この工夫、どこから来たの?」みたいな返しが必ずあるんです。
だから、失敗がないって言えるぐらい。もちろん、「出し切れなかった」「もっとこうしたかった」という役者もいるかもしれない。でも、みんなが認められているという、すっごい幸せな空気があるんです。
サポーターとして見ていて、本当に、みんなを信じて、やりたいことをやらせてもらっている。そんな幸せな空間がずっと続いているのを感じます。
河村 参加している人たちが安心できる環境を作ることは、ワークショップでも、演劇を作る上でも、とても大事なことだと思います。
ワークショップで何か心がけていることはありますか?
舘 多分、本当にいっぱい心がけていたんですけど、4年目になってくると、それが自然になってしまっていて。初めの頃は何か心がけてたんですよ。
加藤 私、2022年に見た時に、サポーターズの皆さんとファシリテーターの皆さんの打ち合わせがすごいなって思ってたんですよ。参加者の方も多いので、それぞれの仕事や生活のことにもみんなが広く目を配っていて。
「実はこういうことが起きてたんだよね」「あの時のワークショップで、こんなことがあったよね」ということを一人一人がキャッチして、チームに共有して、「じゃあ明日はこうしよう」と考えていく。
そういうことを毎回やっていた時間が、安心できる創作環境を作ったり、より面白くしていったりするために必要だったんだろうなと思います。

©︎Eri Mizuma
村井 新しく入るアシスタントには、みんなそれぞれ表現したいことや、やりたいこと、言いたいことがあって、それぞれの方法で伝えてくれるから、「相手の反応を、言いたいことを待ってね。勝手に分かった気にならないでね」ということは伝えています。
そういう心持ちの共有は、いっぱいしていますね。
河村 私たちはできたものしか見ていないから分からないけど、最初からきっと、こんなふうだったわけではなくて、うまくいかなかったこともいっぱいあるんだろうなと想像しています。
舘 あんな大きな声でセリフを言うとか、歌うとか、最初は全然ありませんでした。
村井 泣いちゃったもんね(笑)。
舘 そうよ、そうよ(笑)。みんなが舞台上に立っているっていうだけでも泣いちゃうぐらいの変化はありますね。
村井 最初は、やりたくないことや、やれないことも正直にちゃんと教えてくれていたんですけど、そこからいろんなことにチャレンジしてくれて。
年々、「今年はこれをやりたい」とか、「まさかそれをやりたがるとは」みたいなことが起こるようになりましたね。
舘 それも、特別に心がけているというより、お互いに興味があるから自然とアンテナが立っているのかもしれないです。
例えば、今回、真ん中で歌ってくれていた方。今までそんなに人前で歌うことはなかったんですけど、ワークショップの直前に話していたら、「先週、大阪に社員旅行に行ったんだ」って。
「何したの?」と聞いたら、「夜、みんなでカラオケに行って歌った」って言うから、「何歌ったの?」っていう話になって。そこから、「じゃあ、それちょっと歌ってみようよ」みたいな感じで、作品の中で歌ったり。
無理やり何かを提案するというより、お互いに興味があるから、「最近それやったの? じゃあ、見せてよ」みたいな流れになる。それは、ある意味、心がけているのかもしれないです。
河村 先ほどのお話にもありましたけど、劇場の外、日常の中でも会ったりする。そのつながりが作品にも表れているんだろうなと思います。
人前に立って何かを表現するのは、誰にとっても緊張することだと思うんです。「表現してみたい。でも怖い」という中で、「表現できた」「伝わった」ということが一つずつ積み重なっていく。きっと、作品を作っていくプロセスの中に大切なことがたくさん詰まっていて、それが舞台から伝わっているんだろうなと思います。

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
幽霊、唐揚げ、生ビール。舞台はお客さんが入って完成する
舘 劇場側と参加者のみんなって、すごく補完し合ってるなって思いました。私たちは日頃から演劇を作っているので、演劇のプロではあるんですけど、同時にちょっと「お作法」に飲み込まれている部分もあって。
一緒にアイデアを作っている時に、「ここってさ、何するんだと思う?」って聞くと、「突然、幽霊が出てくると思う」みたいな。
「幽霊出るんだ」って(笑)。
そういうアイデアは参加者のみんなから出てくる。一方で、「幽霊を見せたいんだったら、こう見せたらやりやすいかもよ」というところでは、私たちもアイデアを出せる。そうやって補完し合ってる気はしますね。
河村 幽霊もそうですし、人間を食べるクマも出てきましたよね。何を食べるんでしたっけ?
一同 唐揚げ。

“唐揚げとビールのシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会

“幽霊と熊と酔っ払いのシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
河村 そう!(笑)「これはこの先どうなるんだろう」と思いながら観ていました。
加藤 私は昨日、今日と観ていて、出演している皆さんが、すごくお客さんとコール・アンド・レスポンスをしようとしているのを感じました。
今日も、昨日ちょっと声が小さくなって笑いが取れなかったところを、はっきり言って笑いを取っていて。舞台に立つだけでも緊張するはずなのに、客席に向けてアクションして、その反応を受け取っている。前の方だけじゃなく、奥の方のお客さんともコミュニケーションを取ろうとしているところに、すごく感動しました。
それを見て、「安心して笑ってもいいんだな、一緒にここで」って思えたのが、すごく印象に残りました。
舘 アドリブしまくりですよね。
加藤 昨日と全然違ってた!(笑)
村井 本当に、お客さんが入って完成していくというのが、すごく大きいなと思っています。
昨日のお客さんの多さもあって、今日はみんなの中でも結構プレッシャーを感じていたと思うんです。でも、それを乗り越えて、自分でセリフをアドリブしたり、声を大きくしたりしているのを本番中に見られたのは、すっごいよかったです。
今までは1回だけの本番だったので、今回、複数回やったことで新たな一面が見られたなと思いました。
加藤 最初から「お客さんが入る」ということを意識して上演するのは、ワークショップとは全然違うじゃないですか。
演劇祭でたくさんのお客さんが来てくださる中で、そこを乗り越えて、こんなに客席を沸かせていることに、すごく感動しました。
河村 ありがとうございます。では、会場の皆さんから何かありますか?
――
お客さんA すごく面白かったです。唐揚げとビールのシーンは、どんなふうにして出来上がったんですか?
舘 最初に、店長を演じた方が「居酒屋店長をやりたい」と言ったところから、全部始まりました。
「やりたい役」を出す時は、それぞれがバラバラに出す場合もあれば、「誰々がこれをやりたいんだったら、私はこれをやりたいな」という感じで作っていく場合もあります。
あの時は、まず店長ができて。「じゃあ私、客引きのスーパーマンになる」って。

“客引きスーパーマンと居酒屋店員のシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
「店長の看板メニューは何ですか?」と聞いたら、「唐揚げです」って言うから、「じゃあ私、唐揚げが好きなクマになる」みたいな。
そこに伝説のギタリストも出てくる予定だったんですけど、「最後にバンドをやるから、途中はギタリストを出さないでほしい」となって。それで、伝説のギタリストが酔っ払いと幽霊になった、という感じですね。
ワークショップで一度やってみた時に、「お客さん来ないね。呼んでみようよ。みんな!」って客席で見ていたメンバーを呼んだら、見ていたみんながブワーッと入ってきたんですよ。
「これ本番でもやりたいね。でも本当に入ってきちゃったら困るし、誰も入ってこなくても困るから、ステージには案内しないで、投げる形にしようか」って。
河村 ビール、ぶん投げてましたね(笑)。
舘 受け取っていただけました? ビール。
お客さんA はい(笑)。
舘 ありがとうございます。

“乾杯のシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
河村 ほかにもいろんなシーンがありましたけど、「青春」のシーンは?
舘 あれは「青春」というテーマで作ったんですけど、その前の週には「青春を探している」という作品を作ってたんですよ。
「青春ってどこですか?」「あなたは青春って知ってますか?」っていう、激シュールな作品があって(笑)。
それで次の週に、「今週も青春やろっか」みたいな感じで。
河村 そうやって、前のワークショップからつながっていくこともあるんですね。(笑)
ほかに何かありますか?
お客さんB 神様の頭をかぶっていた……。
会場 (笑)
河村 それもちょっと触れとかないと(笑)。
舘 今回の作品は、2023年の第1回の発表会から3分の1、去年の発表会から3分の1、そして今年新しく作ったものが3分の1、という構成なんです。神様は、去年の発表会で作ったシーンの再演でした。
去年は、神様同士が対決するシーンがありました。その中に「福禄寿(神様の一人)をやりたい」というアイデアがあって。
河村 あの頭も、そのために作ったんですか?
村井 そうなんです。ひょっこりシアターのスタッフメンバーも本当にすごいなと思うのが、「福禄寿をやりたい」って言ったら、あれを作ってくれるんですよ。
河村 それが、なんで戦うことになったんですか?
客席の参加者 ワークショップの時に早撃ち対決みたいなのがあって、それが派生して。
村井 役は決まっていて、そこからなぜか「早撃ち対決したい」ってなったんですよね。
河村 まさに神展開。二つの意味で神展開(笑)。

“神対決のシーン” 豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
舘 このシーンは珍しく、セリフをこちらで書いたんです。
自分たちでアイデアを出して作って演じる喜びもある一方で、「演じる喜び」には、人から渡されたセリフを言う喜びもあるんじゃないか、と俳優でもある方が言っていて。「確かに」と思って。
発表会を重ねてきて、自分のアイデアから作品を作ることはもうお手の物になっていたので、「ちょっとセリフ言ってみる?」という感じで、あのシーンは書き下ろしました。
河村 ありがとうございます。

4年目にもう一度届けたかったもの
お客さんB 実は昨日、友人から案内をもらって、初めて公演を観ました。ものすごく面白くて、同時にすごく深いものがあって、素晴らしい公演だなと思ったんです。
この作品は、また上演されますか? たくさんの人に観ていただきたいなと思って。
村井 今回の作品としては、もし再演があれば……だけど、今回の構成は多分、今日で終わりだと思います。
ただ、今年度のひょっこりシアターの活動はもう始まっていて、11月には発表会があります。そこではまた、今年度のメンバーと一緒に新しい作品を作ります。
活動自体は毎年続いていくので、今回とはまた違う形ですが、ひょっこりシアターの作品はこれからも作られていくと思います。
お客さんB 「何者にもなれるし、でももうすでに何者かになってるよ」という、そのテーマが、たくさんの方に届いてほしいなと思ったので。
またそんな形で再演があれば嬉しいですし、私もまた観に来たいと思います。
一同 ありがとうございます。

©︎Eri Mizuma
舘 ちょっと一個、迷っていることを聞いてもいいですか。
今回、第1回の発表会のものと、去年のものと、今年作ったものを組み合わせたんですけど。
最後に「何々になりたい」と言って、「お前はもうなっている」と返す、あの流れは、第1回の発表会にあったものなんです。第2回以降はやっていなくて、別の表現をしていました。
でも今回、初めて豊岡演劇祭に参加させてもらえるとなった時に、最初の作品にあった、私たちなりの覚悟と愛というか……なんて言ったらいいのか。あの時のものを、どうしてももう一度やりたいと思って、今回、あの流れを入れたんです。
久しぶりにやってみて、やっぱり、あのシーンというか、ああいう言葉を届けたいなって、心の底から思っていて。
だから今迷っているのが、中身は変わっていくけれど、最後はああいう展開になる、というのを、しばらく「お約束」にしてもいいんじゃないかって。
でも、そうしたらどうなんだろう。つまらなくなるんだろうか、とか。どうなんですかね。
舘 (客席に向けて)「うーん」って方もいらっしゃいますね(笑)。
村井 分かんない。俳優たちがちょっと「うーん」って感じかな。
舘 「またやるの、これ」みたいな。
河村 「なんかやらされてんだけど」って。
村井 相談しようか(笑)。

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
参加したいと思った時に、ここにある。ひょっこりシアターのこれから
河村 最後に、この先、ひょっこりシアターをどう続けていきたいか、お聞きしたいと思います。
毎回メンバーが変わる中で、その時にしか観られないものでもあると思います。これからどんなふうに活動を続けていきたいか、お聞かせいただけますか。
藤本 うまく言えるか分かりませんが、私自身の「演劇を観る」という概念が、ひょっこりシアターですごく変わったんです。
それまでは、作られたシナリオを俳優さんが演じるものを観て、感動したり、泣いたりするものだと思っていました。
でも、ひょっこりシアターは、参加している俳優たちが作り上げたものから構成されていて、ステージの中だけではなく、お客さんとも通じ合いながら、掛け合いが続いていく。
今日も、「次、この役者はどんな動きをするのかな」「どう笑わせてくれるのかな」って、期待しながら観ていた方もいらっしゃると思うんです。私自身がそうでした。
生ビールや唐揚げを投げてもらったら、観客からも自然と手が出る。カメラを向けられたらピースをしたり。そうやってステージ側と観る側が一体になっていくところが、ひょっこりシアターの素晴らしいところだと思います。
本当に唯一無二の演劇だと思っています。
これからも応援したいですし、私自身、もうこれを抜けられなくて(笑)。また陰ながら応援していきたいと思っています。
(拍手)
舘 本当に続けていきたいです。やっていきたいです。私は、ひょっこりシアターって、本当に優しい空間だと感じるし、本番をやると、本当に優しい空気を感じるんです。
なんか、世界中がこうなったらいいな、なんて思っちゃってて。思っちゃうじゃないですか。
でも私は、作品を作り続けることしかできないので、「広げ方とか教えてほしいです」っていう(笑)。
世界中がこうなっていくための一歩一歩を、みんなと一緒に地道に歩んでいきたいと思っています。
(拍手)
村井 ひょっこりシアターのメンバーのえりさんが、Facebookのインタビューでも答えてくれていたんですけど。

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
村井 1年目は勇気が出なくて申し込めなくて、その発表会を観て、「やっぱりやればよかったな」と思って、次の年に申し込んでくれたんです。
やっぱり、申し込むのって勇気がいると思うんですよね。どういう場所か分からないし。
だから、どのタイミングでも、ひょっこりシアターがずっと江原河畔劇場にあって、毎年ワークショップの参加者を募集していられるように。
これからも、ひょっこりシアターを続けていきたいと思っています。
気になったら、ワークショップを見学に来ていただくこともできますので、ぜひご連絡いただけたらと思います。
(拍手)

舘 次は11月29日ですね!
河村 ぜひ、そちらにもご参加いただけたらと思います。
きっと皆さんの脳裏にある、宙に浮いた生ジョッキのキラキラした世界をみんなで共有しながら(笑)、今日のアフタートークは、これで終了したいと思います。
改めて、豊岡演劇祭に参加していただいた皆さん、活動を支えてくださった皆さん、そして本日ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。
一同 ありがとうございました。

豊岡演劇祭2026『ひょこりシアター』 © igaki photo studio / 提供:豊岡演劇祭実行委員会
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ひょっこりシアター次回公演▼
江原河畔劇場へ行こう!プロジェクト
ひょっこりシアター2026『ひょっこり大行進』
構成・演出:舘そらみ
ワークショップファシリテーター:村井まどか
