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対談企画|もっと知りたい!ひょっこりシアター vol.3(安達康平さん)

江原河畔劇場で活動する「ひょっこりシアター」が、今年、初めて豊岡演劇祭に参加します。

そこで、豊岡演劇祭2026での上演に向けて、「ひょっこりシアターってどんな活動?」「どんなふうに作品をつくっているの?」を、あらためてご紹介する企画「もっと知りたい!ひょっこりシアター」。

vol.3では、ひょっこりシアターに参加しているお二人に、それぞれお話を伺いました。
今回は、お一人ずつ2回に分けてご紹介します。

一人目は、3年前から創作ワークショップに参加している安達康平(あだちこうへい)さん。ひょっこりシアターに参加したきっかけや、これまでの創作で印象に残っていること、参加する中での自身の変化や演じることへの思い、そして初めての豊岡演劇祭に向けた今の気持ちをお聞きしました。

聞き手は、江原河畔劇場スタッフの太田久美子。ひょっこりシアターのファシリテーターの福田倫子も同席し、時折質問を交えながらお話を伺いました。

――ひょっこりシアターに参加したきっかけを教えてください。

最初に参加したのは、3年くらい前です。チラシを見たのがきっかけでした。当時、演じることや、声優のようなことに少し興味があった時期だったんです。

でも、周りに参加する人はいないだろうなと思っていて、最初は見送ろうかなと考えていました。

――そこから、実際に参加してみようと思ったのは、どんなきっかけだったんですか?

同じ事業所のメンバーで、「行きたい」「行く」という人が2人いたんです。それなら僕も参加してみたら、どんなことができるんだろう、できるのかな、というのが気になって。

一人で行くのには少し抵抗があったので、一緒に行く人がいたのは助かりました。

最初は「見るだけでもいいかな」って、自分の中で勝手にハードルを下げて、見学みたいな感じで行こうと思っていたんですけど、結局、村井さんたちの雰囲気に巻き込まれて(笑)。自己紹介もして、劇の創作にもちゃんと参加していました。

――「巻き込まれて」というのは、楽しそうな雰囲気に自然と入っていったような感じですか?

そうですね。やる前はやっぱり少し緊張していたんですけど、やってみたら楽しくて。村井さんたちのおかげで、「演劇って楽しいものなんだ」と思えるようになりました。
馴染むきっかけ、溶け込むきっかけにも十分なったと思います。

――ひょっこりシアターでは、どんな時間が好きですか? やっていて楽しいことは何ですか?

醍醐味は、みんなで劇をつくる、創作の時間ですね。いろんな話し合いの中で、新しいストーリーが描かれていくところが特に好きです。

中には斬新な意見もあるんですけど、それも全部含めて、一つの作品になっていく。ちょっと話がそれそうになったら、「ちょっと戻そう」みたいな、そういう力技みたいなところもあって(笑)。

――これまでいろいろな作品をつくってきたと思うんですが、「この創作は面白かったな」と特に印象に残っているものはありますか?

クレーンゲームの話ですね。あれは最初、「これ、まとまるんかな」って思っていました(笑)。いろんな意見が出て、途中で雷に打たれたり、いろいろあったんですけど。

でも、ファシリテーターの方たちと一緒に組み合わせていくうちに、一つのストーリーとして形になっていくんです。「自分の意見もちゃんと入ってる」っていう驚きもありました。

その時につくったのは、クレーンゲームでおもちゃを取りすぎた人に、突然雷が落ちてきて……という話でした。

――そこから、どんなふうに物語が広がっていったんですか?

最初は、タイムスリップするというアイデアもあったんです。それで、雷に打たれて別の世界に行ってしまって、元の世界に戻るためにいろいろ探していく、というようなストーリーになっていきました。

クレーンゲーム屋さんの店長も巻き込んで、一緒にその世界へ行くんです。

――最初に出てきたアイデアから、どんどん登場人物や出来事がつながっていったんですね。

そうですね。最初は「これ、どうなるんだろう」と思っていても、みんなのアイデアが少しずつつながって、ちゃんと一つの話になっていく。その過程が面白いです。

――創作ワークショップでは、最後に発表会がありますよね。みんなでつくったものが一つの作品になって、本番を迎えるまでの時間はどうですか?

本番は一度きりだったり、回数としてはそんなに多くないので、そこまでの稽古を経て、最後はひとつの集大成になると思っています。

みんなでいろいろ工夫したり、付け加えたりしながら、いいものをつくっていく。その過程が、文化祭みたいな感じで楽しいですね。

――文化祭みたいな感じなんですね。

僕は、高校の時は文化祭とか、そこまで楽しんでいた方ではなかったんですけど、今になって、みんなでワイワイしながら一つのものをつくる楽しさが分かるようになった気がします。

――発表会に向けてみんなでつくっていく中で、特に印象に残っていることはありますか?

最初の頃から、福田倫子さんには結構お世話になったという印象があります。芝居の中でもすごくアクティブで、感情も動きもダイナミックで(笑)。

その中でも、特に印象に残っているのは島田さんです。最初に役のお手本を見せてくれた時の、ツッコミやアドリブがすごく印象に残っています。それから、島田さんと永田さんの組み合わせも印象が強くて。

――どんなところに、そう感じたんですか?

その場で出てくる反応だったり、動きだったり。やっぱり、それぞれに強みがあるんだなと思って。
そういう人たちと一緒にやる中で、「自分もこうなりたいな」と思うことが少しずつ増えていった気がします。

――何度か参加する中で、「こうなりたい」と思うものが少しずつ増えていったんですね。

今考えてみると、参加するたびに少しずつ気持ちが変わっていった感じはあります。

福田 去年は、応募用紙に「一参加者ということではなく、一人の俳優として参加したい」って書いてくれていたよね。

――その気持ちが出てきたきっかけって、何かあったんですか?

これまで何度か共演したり、参加したりする中で、すごくエネルギッシュだなと思ったり、芝居を見ていて「これはすぐには真似できないな」と感じたり。
そういうのを何度も見ていくうちに、芝居だけの話じゃなくて、「こうなりたい」が少しずつ出てきた気がします。憧れというか。

福田 去年は本当に俳優としての関わり方がすごかったんです。自分で家でいろいろ考えてきてくれたり、アドリブも入れたりして。今までと取り組み方が変わったんだなって、すごく感じました。

――自分の中でも、そういう変化はありましたか?

前より、「どう演じるか」「何をやりたいか」を自分でも考えるようになったと思います。

福田 去年の創作では、安達さんが「ヤクザの役をやりたい」と提案してくれたんです。
私は最初、「ヤクザ=怖い人」というイメージで考えていたんですけど、安達さんは「人情系の親分がいい」と言っていて。

――「人情系の親分」というのは、どんなイメージだったんですか?

借金を取り立てに行くけれど、相手が困っていたら、逆に「これでうまいものでも食え」ってお金を渡すような人です。任侠もののイメージもあって、少し誇張したら面白くなるんじゃないかなと思いました。

福田 それを聞いて、「私の方が役のイメージを決めつけていたな」って思ったんです。安達さんのアイデアで、見方が広がりました。

――ひょっこりシアターのことを、仕事先や友達など、周りの方と話すことはありますか?

具体的に、稽古でこんなことをしたとか、こういう作品をつくったとか、そこまで詳しく話すことはあまりないですね。
でも、出演していることとか、毎回稽古に来ていること自体が、「僕はこれを面白いと思っているんだ」ということを伝えている気がします。
ちょっと語弊があるかもしれないですけど、中毒性があるというか(笑)。

やっている間は面白いんです。でも、その楽しさを言葉で説明するのは意外と難しくて。

ただ、「これって実は面白いんだよ」と言わなくても、発表会に出るとか、稽古に通い続けるとか、そういうことから伝わるんじゃないかなと思っています。

――ひょっこりシアターに参加するようになってから、気持ちや考え方、普段の生活の中で、何か変わったことや気づいたことはありますか?

小さいところから言うと、テレビドラマを見る時の見方が変わりましたね。「この演技、すごいな」とか、「こういう表現をするんだな」と、以前よりも演じる側の視点で見ることがあります。

――実際に自分が演じるようになったことで、新しく出てきた視点なんですね。

そうですね。

それから、ひょっこりシアター全体のことを考えると、いろんな事情があったり、障害があったとしても、こういうふうに表現する場所があったり、「こういう生き方があってもいいんだ」と思えたり。
いろんな人の生き方を、身近で見ることができるのも大きいですね。僕自身も当事者なので、勇気づけられるというか、いろいろ感じることがありますね。

――ひょっこりシアターの中だけではなく、普段の生活の中で変わったと感じることはありますか?

同じ事業所のメンバーと接する時にも感じます。僕自身、以前は初対面の人に対して、どこか先入観を持ったり、壁をつくってしまったりすることがあったと思うんです。でも、そういう壁が自分の中ではなくなりました。

共演者とのつながりとか、ひょっこりシアターの中で一緒にやってきたことから、見えないけれど、絆というか、つながりみたいなものを感じます。

当事者同士だったり、同じような悩みを抱えたりしながら来ている人たちと活動を重ねる中で、そういうつながりを感じますね。

極端に言えば、「生きることが演じること」のようにも感じます。

――「生きることが演じること」。

たとえば、つらい自分を隠すために、少し演じるようなこともあると思うんです。

普段の生活の中でも、本当の自分をそのまま出している時もあれば、少し取り繕ったり、その場に合わせたりすることもある。そう考えると、「演じる」ということは舞台の上だけのものではないんだなと思います。

いつもの自分もいるし、状況によって出てくる違う自分もいる。その時々で、いろんな自分と向き合いながら生きているんだと思います。

演じるって、思っていたよりずっと幅広いことなんだなと感じるようになりました。

――初めて豊岡演劇祭に参加することが決まって、今はどんな気持ちですか?

より幅広い方に、僕らの演劇が届くんじゃないかなと思っています。

ちょっと大げさかもしれないんですけど、これまでひょっこりシアターのことを知らなかった人や、障害のある人とあまり関わる機会がなかった人たちにも、僕らの作品を見てもらえるんじゃないかなと。

僕らは僕らの個性を生かして演じて、作品をつくっているので、それを見て「楽しそうだな」とか「素敵だな」と思ってもらえたら、僕にとっては、それだけでも発表した意味があると思います。

――楽しみにしていることはありますか?

ひょっこりシアターで演じられる機会があることが、まず楽しみです。
それから、また同じメンバーと会えて、今年も少しブラッシュアップしながら、作品を磨いていけることも楽しみにしています。

去年の作品をそのままやるというより、去年のものをベースにしながら、また今年のメンバーでつくっていくことになると思います。再演ではあるけれど、新しい作品をつくるくらいの気持ちです。

――最後に、今あらためて思うことがあれば教えてください。

演じられて嬉しいなとは思います。やっぱり。

ひょっこりシアターに参加する前までは、そういうきっかけもなくて、むしろ社会と隔絶されたような感じがありました。自分は社会にはちょっと溶け込めないだろうな、と思っていたところもあって。

でも、そういう人でも参加できる機会があるということは、僕にとってすごく助けになりました。それから、この先、この経験は、その人それぞれの資産になると思っているんです。参加するだけでも。

最後までやり遂げたら、きっと何か得られるものがあるはずで。僕だけじゃなくて、ほかの人にも、何か得られるものがあると思っています。

だから、ひょっこりシアターにも、もっといろんな人に参加してほしいです。
演劇をすることを、僕はおすすめしたいですね。

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豊岡演劇祭2026 公式プログラム
『ひょっこりシアター』
構成・演出:舘そらみ
2026年9月26日(土)〜9月27日(日)
江原河畔劇場
https://toyooka-theaterfestival.jp/program/17113/