
江原河畔劇場で活動する「ひょっこりシアター」が、今年、初めて豊岡演劇祭に参加します。
そこで、豊岡演劇祭2026での上演に向けて、「ひょっこりシアターってどんな活動?」「どんなふうに作品をつくっているの?」を、あらためてご紹介する企画「もっと知りたい!ひょっこりシアター」。
演出の舘そらみさん、ファシリテーターの村井まどかさん、制作の金澤昭さん、鐘築夏海さんにお話を伺うvol.4。
前編では、これまでの作品をもとにした今回の創作や、本番まで変わり続ける作品づくり、初めて豊岡演劇祭に参加することへの思いなどを伺いました。
後編では、普段の活動を通して続いている日々の関わりや、創作の中で飛び出した「やってみたい役」、そして、これから始まる集中稽古や本番に向けて楽しみにしていることについてお聞きします。

【活動のある日も、ない日も】
金澤 ひょっこりシアターならではのこと、どんなところですか?
舘 根本の心構えは、どんな作品でも、その作品やメンバーに応じたことをしているという意味では、一緒だと思うんです。
でも、ひょっこりシアターのみんなと江原河畔劇場の関わり方は、もはや作品だけのつながりを超えているな、と感じてるんですよ。
たぶんそれは、日頃のコミュニケーションの量だったり、本当にちょっとしたことの積み重ねで。「明日はワークショップですよ。頑張りましょうね」みたいな一文が届くとか。そういう積み重ねが信頼関係をつくっているんだと思います。
鐘築 確かに、メールとかはちょっと書きたくなっちゃうんですよね。やっとみんなに会えるのが嬉しくて。
普通に事務的に送ればいいものでも、「楽しみにしてます」とか、なんか送りたくなっちゃう。
舘 私は毎年、仕上げの時期に来るので、1年ぶりくらいにみんなに会うんです。
最初は劇場と、そこにワークショップを受けに来る人という関係だったのが、少しずつお互いの生活に関わるようになって、関係が深まっているのが、すごく印象的です。
演劇祭の一瞬のために集まった特別なグループではなくて、こういう関わりが365日ここにあるんだ、ということを伝えたいなと思います。
村井 そう言われてみると、ひょっこりシアターのワークショップ自体は、1年間で10数回なんですけど、それ以上にみんなに会っているような気がします。
劇場に遊びに来てくれたり、公演を観に来てくれてお話ししたり。
舘 毎年、公演が終わった後も「また来年ね」みたいな約束があるから。しばらく劇場に来ない参加者がいても、どこかでお互いのことを思い出すような、不思議な絆を感じます。

鐘築 参加者のみんなにとって、私たちだけじゃなくて、「劇場の人はみんな」みたいになってきているのも、すごいなって最近思います。
村井 仕事終わりに劇場へ遊びに来る参加者がいるんですけど、この間、たまたま別の事業で劇場に来ていた、初対面の演出家にも自分から「こんにちは」って挨拶していたんです。
その人は一番最初から参加していて、初年度はすごく恥ずかしがり屋で。出石特別支援学校の卒業公演をここでやった時、恐竜の役で「ガオって言って」と言ったら、「恥ずかしくて言えない」って。「ガオ」と書いた札を持っていたくらいだったんです。
舘 昨日の創作ワークショップでは、「布団が吹っ飛んだ」って言ってたわけですから(笑)。
村井 そうやって変わっていく姿を見られるのも嬉しいですね。
舘 でも、こうやって話していると、すごく閉じた関係のように聞こえるかもしれないけど、全然そうじゃなくて。
毎年、新しい人も入ってくるし、忙しくてしばらく来られなくなる人もいる。でも、また戻ってきたりもする。
だから、絆はあるけど、別に閉じてない、みたいな。
金澤 みんなそれぞれの生活がある中で、劇場や演劇とどう関わっていくのか、ということがあると思うんです。僕たちも、参加者も、それぞれが自分なりの付き合い方をずっと考えているような気がします。
演劇を観ることも、やることも、それぞれに楽しみ方が広がっている。みんなが演劇に出会えたことも、よかったなと思います。

【「マリオです」って言ったら、もうマリオ】
――これまでの創作では、いろいろな「やってみたい役」が出てきたと思います。特に印象に残っている役はありますか?
舘 私は「ドラえもんの息子」かな。
金澤 ドラえもんの息子?
舘 大体何が出てきても、アイデアを出すお手伝いはできるんですけど、「ドラえもんの息子」と言われた時は、「息子? どういうことだ?」って(笑)。でも、最終的にはスモールライトとかを使って、ちゃんと物語になっていました。
村井 私は、「綾瀬はるかをやりたい」という子と、「ドナルドダックをやりたい」という子が同じチームになった時かな。
綾瀬はるかとドナルドダックが映画を撮っているシーンになって。「どういうシーンなんだろう」って(笑)。でも、「綾瀬はるかをやりたい」と言われれば、綾瀬はるかになるんです。
鐘築 ドラえもんとかマリオとか、自分たちの中でその時にきているキャラクターが出てくることも多いんです。
でも、演劇にしてみると、「絶対こんなマリオいないだろう」みたいになる(笑)。既存のキャラクターを超えて、自分なりに演じている。でも、それはちゃんとマリオなんですよね。
村井 確かに。キャラクターの名前を言う割には、そのキャラクターになろうとはしない(笑)。
一同 しない(笑)。
村井 「マリオです」って言ったら、もうマリオ。マリオらしさは別に気にしない。

【始まる瞬間まで、変わり続ける】
――これから集中稽古が始まりますが、稽古から本番に向かう中で、みなさんが注目していること、楽しみにしていることを教えてください。
金澤 僕は、作品が始まる瞬間が好きなんです。去年も活動や発表を見ていて、どう始まるのかということに注目していました。
今回は、豊岡演劇祭でひょっこりシアターの公演が始まる、その最初の瞬間。舞台上のみんながどんな顔をしているのか、楽しみですね。
鐘築 私は、お客さんには見えない部分なんですけど、そらみさんから「こうしてみようか」と急にお題が出て、そこにみんなが乗っかってきた時に、アシスタントたちがどう対応していくのか。
「本番も近いぞ、これも作らないといけない、みんなとの稽古もある。さあ、どうする」みたいな(笑)。本当に毎回ドタバタなんですよね。舞台裏と表の雰囲気が全然違って。そこもすごく楽しみです。
あとは、今回はみんなの中にも「再演」という気持ちが少しあると思うんです。それをどう受け止めていくのか。
1年前に一度やった作品にもう一度向き合うことで、みんなの俳優としての部分も、これまで以上に見えてくるのかなと思っていて。そこも楽しみです。
舘 私は、たぶんまだ想像できていなくて。みんなが、そして私たちが、これから2週間くらいどう進んで、何を思うのか。本番前にどんな緊張感になるのか、お客さんを前にして何を思うのか。まだ全然わからない。
でも、ひょっこりシアターって、「想像してもしょうがない」みたいな感覚があるんです。想像しないで進むものだと思っているのかもしれない。だから、もうわからない(笑)。
演出って、本来は行き先をイメージして、そこに向けて旗を振る役職だと思うんですけど、ひょっこりシアターだけは、そういうわけでもなくて。
去年は、始まる前に行き先を想像して、「こっちに行くよ」ってやっちゃったことがあって。途中で「この作品は、今のメンバーには合わないかもしれない」となって、そこから方向を変えたんです。
村井 だからこそ、最初から決め打ちしない。
舘 その都度、全力で楽しんでいったら、どこまで行けるのか。それが楽しみです。

【知っている人にも、初めましての人にも】
――今回、豊岡演劇祭で上演することで、初めてひょっこりシアターを観る方もいると思います。「こんな人に観てもらいたい」というのはありますか?
金澤 江原河畔劇場を知っている人にも、もちろん観てほしいし、初めましての人にも来てもらいたいです。
豊岡市内にいるけど、まだ江原河畔劇場やひょっこりシアターに出会っていない人。あるいは県外から来て、豊岡も、江原河畔劇場も、ひょっこりシアターも、すべてが初めてという人。
「初めまして」が多い人にこそ、出会ってもらえたら面白いんじゃないかな、という気がしています。
鐘築 出演者の中にも、最初は「気になっていたけど、自分は……」という感じで、1年目は観るだけだった方がいるんです。
だから今、ひょっこりシアターのことを知って、「気になるな」「なんなんだろうな」と思っている方には、ぜひ来てほしいです。
やっぱり再現不可能なので、同じものはもう観られない。できれば2回とも観てほしいくらいです(笑)。
未就学児も観られるので、いろいろな人と一緒に「観る」ということにも、チャレンジしてみてほしいです。
――ありがとうございました。
◇豊岡演劇祭2026の上演に向けてお届けしてきた「もっと知りたい!ひょっこりシアター」。開幕前の記事は、今回でひと区切りとなります。
公演は、まだまだご予約受付中です!ぜひこの機会に、『ひょっこりシアター』をご覧ください。
連載は、公演終了後のvol.5へと続きます。

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豊岡演劇祭2026 公式プログラム
『ひょっこりシアター』
構成・演出:舘そらみ
2026年9月26日(土)〜9月27日(日)
江原河畔劇場
